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【人気・議論沸騰中】グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)を比較してみる

こんにちは。HIROBUNです。

いつも、当ブログをお読みいただきありがとうございます。

さて、前回は、私家版FOY2019ランキングなどというものを作成してみたのですが、その中で取り上げなかった投資信託がありました。

表題にしましたので、お分かりだと思いますが、それはグローバル3倍3分法ファンド(1年決算型)(以下、グロ3)です。

理由としては単純で、グロ3は昨年10月4日が設定日なので、まだ、Yahoo!ファイナンスでも年間リターンが出ておらず、まだ比較できないと思っていたからです。

しかし、自分のエクセルシートでは10月になればリターンの計算ができたことに、上記のランキングを作成した後になってから気付きました(汗)。

もし、上記のランキング作成時に一緒に比較していたら、そして何も忖度しなければ、確実に圧倒的1位でしたね。

しかし、今回記事にしてみて、やっぱりグロ3を1位にしなくてよかったと思いました。

その理由を最初に書いてしまうと、多くの投資ブロガーが指摘しているように、グロ3にもレバレッジ型ファンドに特有の自然減価の懸念があるにもかかわらず、運用会社からはその懸念を払拭するような説明が行われていないからです。

詳しくは「6 自然減価」で書きます。 

1 ファンドの特色

主として、世界(日本を含む)の資産(株式、REIT、債券)に分散投資を行う。世界の株式やREITなどの現物の組入総額と株価指数先物取引国債先物取引の買建総額の組入合計額が、信託財産の純資産総額の3倍相当額となるように投資を行う。原則として、為替ヘッジを行わない。ファンドオブファンズ方式で運用。9月決算。(引用元:モーニングスター

冒頭にも書きましたが、いわゆるレバレッジ型のバランスファンドということになります。

資産配分は次のとおりです。

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(画像元:交付目論見書)

この図は、皆さんも既に様々な記事等で目にしていると思いますが、色々と思考を刺激されます。

まず、左の3分法(1倍バランス)は株式クラスとリートクラスが合わせて3分の1、債券クラスが3分の2を占めており、これだけなら、かなりローリスク・ローリターンのバランスファンドになると思われます。

それが、右の3倍3分法になると、株式クラスとリートクラスについては、3分の1✕3倍となり、投入資金全額で買ったのと等しいリターンが期待できることになります。また、債券クラスについては、3分の2✕3倍となり、投入資金の2倍の資金で買ったのと等しいリターンが期待できます。

ここからは私のこれまでの経験も踏まえた上での理解となりますが、株式やリートの価格が上昇しても、投資家は債券をすぐに売却するようなことはしないため、債券の価格は下落しません。このときグロ3を買った投資家は、債券の価格に足を引っ張られることなく、株式やリートの価格上昇時のリターンをほぼ100%得ることができます。

一方で、株式やリートの価格が下落すると、投資家は株式やリートを売却し、避難先として債券を購入するため、債券の価格は上昇します。このときグロ3では、投資家は、債券の価格上昇時のリターンを200%得ることができますので、株式やリートの価格下落のマイナスを大きくカバーできることになります。

この結果、グロ3は、運用会社が言うように「株のように上がるが、株のようには下がらない」理想的なバランスファンドであるように思われるのですが、冒頭に書きましたとおり、完璧な投資法は存在しないことに、私達投資家はあらためて注意を払う必要があると考えます。

2 基準価額変動率の推移

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(出典:Yahoo!ファイナンス

グロ3はバランスファンドですので、いつもなら、他のバランスファンドと比較するだけなのですが、現状ではレバレッジ型ではないバランスファンドとはリターンに大差があることが分かっていましたので、あくまでも参考ですが、レバレッジ型ではないインデックスファンドの中では、リターンで唯一対抗できそうな国内リートファンドも一緒に比べて見ました。

グロ3は紫色の線です。2018年12月こそ、他のバランスファンドと同様の下落を見せましたが、その後の上昇時は、他のバランスファンドを大きく上回る上昇を見せました。

2019年5月には下落しましたが、その時の下落は他のバランスファンドと大差なく、その後はまた大きく上昇し、他のバランスファンドのリターンを引き離しています。

まさにコンセプトどおりのパフォーマンスと言えます。

3 リターンとリスク

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(出典:Yahoo!ファイナンス

グラフでも見ていただきましたように、グロ3が圧倒的な年間リターンを示しました。レバレッジ型ではないバランスファンドでは最も年間リターンが高い野村7資産の2倍以上のリターンです。

また、年間標準偏差についてもかなり低く抑えられており、Slim8資産をやや上回る程度ですが、野村7資産ほど低リスクではないですね。

このため、シャープレシオは一般的に優秀とされる1を大きく超える2.17をマークしています(しかし、これをさらに上回る国内リートってどうなっているのでしょうか・・・?)。

そして、言うまでもありませんが、純資産2,600億円超は、グロ3がいかに投資家の支持を集めているかを表していますね。

4 純資産の推移

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(出典:Yahoo!ファイナンス

グロ3が2018年10月に設定されて以来、純資産は2019年3月までは18億円程度でしたが、翌月には312億円、後は現在の2,607億円まで一直線に増加しています。Yahoo!ファイナンス投資信託ランキングで、月次の資金流入額第2位は伊達ではないですね(なお、11月に増加が鈍化したように見えているのは、11月はまだ1日分しかカウントされていないからです)。

要するに売れまくっているわけですね。

5 総口数の推移

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(出典:Yahoo!ファイナンス

総口数(赤色の線)も、純資産とほとんど同じように増加しています。2019年3月は16億口程度でしたが、翌月には278億口となり、後は現在の2,053億口まで一直線に増加しています。

2019年5月に一時基準価額が下落した際も、全く影響が見られませんでしたので、投資家は、グロ3については短期的な売買は考えていないことが推測されます。

6 自然減価

グロ3は巧妙なコンセプトに基づいて設定されたレバレッジ型のバランスファンドであり、これまで見てきた限りでは穴がないように思えます。

しかし、グロ3については、次のとおり多くのベテラン投資ブロガー様から称賛とともに、懸念が示されています。

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レバレッジ型投資信託「グローバル3倍3分法ファンド」の評価と注意点 - ゆとりずむ

グロ3についての懸念の多くにつきましては、すでに上記の記事で詳細に触れられ、分析されており、正直言って私の出る幕はありません。

そこで、ここでは私が最も懸念するレバレッジ型ファンドの自然減価に絞って、見える化し、説明をしてみたいと思います。

この自然減価を具体的にお示しすると、次の表のようになります。

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この表の意味ですが、今、仮にレバレッジなし、レバレッジ2倍、レバレッジ3倍で同じ資産クラスに投資する、それぞれ当初価格が100の3つのファンドがあるとします。

表の上半分を見ていただくと、上記の資産クラスが、1回目に10%下落し、2回目に10%上昇すると、当初価格の100が、レバレッジなしでは99、レバレッジ2倍では96、レバレッジ3倍では91に減価します。さらに、3回目、4回目でも同様の下落と上昇を繰り返すと、それぞれ、98.01、92.16、82.81に減価します。

同じ割合で下落し上昇したので、元の価格に戻るような気がしますが、実際にはそうはならずに減価し、しかも、減価率はレバレッジの倍率が大きいほど大きいということですね。そしてこれは、表の下半分のように、上昇と下落の順番を入れ替えても同じです。

では、これをもっと推し進めるとどうなるのかをグラフで見てみます。

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ここでは、レバレッジなしが1の線で、以下、レバレッジ2倍が2の線~レバレッジ10倍が10の線となっています。

最も極端なレバレッジ10倍の線を見てみますと、1回目で10%✕10で100%上昇しますが、2回目では-10%✕10でなんとゼロになってしまいます。

ここまでひどくはなくても、レバレッジが高いほど早期に大きく減価することがお分かりになると思います。

いや、グロ3はバランスファンドだから、もっと上昇と下落は小さいはずというご意見もあろうかと思いますので、5%の上昇と下落を繰り返すグラフも作成してみました。

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このグラフでは、レバレッジ10倍でも21回目の時点でまだ価格はゼロになっていませんが、レバレッジが高いほど早期に大きく減価する傾向は10%の場合と変わらないことが分かります。

これらのグラフを見る限り、レバレッジ3倍のグロ3は自然減価が避けられないと考えられますが、ベテラン投資ブロガー様の中にはそのような心配は杞憂との声もあります。

確かに、上記のグラフは、当初に一括で買い付けた資産クラスをずっと運用し続けた場合の話であり、その場合は自然減価は避けられないことは事実だと思いますが、実際のグロ3は、日々新たな資産クラスを買い付けているはずなので、自然減価の時期はどんどん先延ばしされている可能性があります。

また、グラフで想定したのは、5%ないし10%の上昇と下落が交互に起こる場合ですが、実際にはそんなことはあり得ず、下落の後にもっと大きく上昇する可能性もあるわけです。そして、その場合は、自然減価が見かけ上リセットされることも想定されます。もちろん、その逆にもっと大きく自然減価するケースもありえるわけですが。

さらに、グロ3はバランスファンドですので、自動リバランスが働きます。リバランスは値上がりした資産クラスを売却して、値下がりした資産クラスを購入することですから、それが自然減価にどのような影響を与えるのか。

これらの疑問については、正直、私の知識では分かりませんでしたし、そのあたりをご説明してくださっている記事も見つけられませんでした。

まあ、だからこそ議論を呼んでいるのでしょうね。

7 終わりに

何度も書いておりますとおり、私はバランスファンド派で、グロ3が話題になり始めたときに心が動いたことは確かです。

この記事を書くまでは、現在私が買っている野村7資産の一部を売却して、買ってみようかと考えたこともあります。

しかし、野村7資産よりはリスクが大きいですし、何より、上記の6で書いた自然減価について、いまだに納得のいく説明がされていないようですので、私自身としてはグロ3を購入する予定はありません。

しかし、自然減価については、それほど心配する必要がない可能性もあります。

以下はあくまでも推測ですが、グロ3は自然減価により徐々にパフォーマンスを低下させるが、全資産クラスの下落といったアクシデントのない限り、10年間はレバレッジなしの既存のバランスファンドをパフォーマンスで上回る、だから、運営会社は自然減価のことについてあえて触れないと、こんなところなのかなと考えています。

ですので、上記のベテラン投資ブロガー様も記事で書かれているように、グロ3を買おうとお考えの投資家の皆さまは、決してほったらかすことなく、日頃からグロ3の基準価額の動きに目を光らせ、パフォーマンスに劣化の兆候が現れたら、長期投資には必ずしもこだわらないことをお勧めします。

今回はここまでです。ではまた。

※投資は自己責任でお願いします。